気になる本 01/28

四畳半王国見聞録 新潮社 森見登美彦

私なんぞは、「四畳半」というとサルマタ一丁でカップラーメンばかり食べている松本零士の四畳半物漫画が思い浮かんで、その次に永井荷風原作、神代辰巳監督、宮下順子主演のにっかつロマンポルノが浮かぶのですが、最近は森見登美彦さんの著作という事になるようです。現代に果たして四畳半なんて古臭いシチュエーションが受けるのかと思いきや、

数式による恋人の存在証明に挑む阿呆、桃色映像のモザイクを自由自在に操る阿呆、心が凹むと空間まで凹ませる阿呆。狭小な四畳半に立て籠もる彼らの妄想は壮大な王国を築き上げ、やがて世界に通じる扉となり…。(bk1より)

なるほど、これはちょっと面白そうですね。平成の四畳半とは如何なるものか。

しづ子 娼婦と呼ばれた俳人を追って 新潮社 川村蘭太

 鈴木しづ子という俳人がいたことは全く知りませんでした。戦後の混乱期にダンサーをしつつ、妻子持ちの黒人兵と恋に落ち、情熱的な句を多く残したようです。「娼婦俳人」と呼ぶ人もいたとか。恋人は朝鮮戦争で戦死し、本人も姿を消し生死も不明との事。検索するといくつか句を読むことができました。現代でいうと「歌舞伎町の女王」を歌っていた頃の椎名林檎に相通じるものがあるかもしれません。

寒き夜や をりをりうづく 指の傷
湯の中に 乳房いとしく 秋の夜
コスモスなど やさしく吹けど 死ねないよ
夏みかん 酸つぱしいまさら 純潔など
蟻の體に ジュツと當てたる 煙草の火

堂本印象画集 伝統と創造 生誕120年記念 青幻舎

堂本印象は、今年生誕120年を迎える日本画家です。堂本印象美術館HPのギャラリーで作品をいくつか見ることができますが、初期の日本画らしい作風から、戦後はモンドリアンなどの影響を受けた抽象画(象徴画)へとめまぐるしく作風が変わりました。本書は代表作125件を収録しているとのことで、画家の変遷をより詳細に追えることと思います。