気になる本 01/29

アナトリア クレヴィス 鬼海弘雄

長年浅草寺を訪れる人々を被写体に多くの作品を発表している鬼海弘雄が、アナトリア(トルコのアジア部分)の大地に生きる人々を15年の歳月を費やして撮影した写真集。モノクローム写真に収まった人々を見ていると、彼らが経てきた時間の深みを感じます。どんな人にもその人が生きてきた時間の重みがあります。彼らはどんな時間を経てきたのでしょうか。行ったこともないアナトリアですが、そんなことを想像していると何だか勇気が湧いてくるような気がします。

レーニンの墓 上・下 ソ連帝国最期の日々 白水社 デイヴィッド・レムニック著 三浦元博訳

 著者はワシントン・ポストのモスクワ特派員をつとめたアメリカのジャーナリスト。彼が共産党独裁体制崩壊までの知られざる事実を明かすノンフィクション作品。当時政権の中枢にいた人だけではなく、”サハリン島やシベリアの炭坑の地下から、カフカス中央アジアの集団農場まで、都市の裏町から言論・文化界、共産党中央にまで(訳者あとがきより)”幅広く取材してソ連崩壊の過程に迫ります。著者は本書により1993年にピューリッツァー賞を受賞しました。
 しかし、ソ連が崩壊してもう20年になるんですね。かつてはアメリカと覇を競った大国が崩壊するとは当時思いもしませんでした。その裏に何があったのか?非常に興味をそそられますが、ロシアの現状を聞くにつれ、体制は変わったけれど、単に権力が移っただけではないかなという気もします。

日本語版序文 終焉という幻想
第1部 記憶のために
 第1章 森の戦い  第2章 幼年スターリン主義者  第3章 永久保存のために
 第4章 回帰する歴史  第5章 革命の寡婦たち  第6章 ニーノチカ 
 第7章 メモリアル  第8章 川面のメッセージ
第2部 民主主義の展望
 第10章 仮面舞踏会  第11章 二重思考者たち(ダブルシンカーズ) 
 第12章 党幹部たち  第13章 貧しき人びと  第14章 地底の革命 
 第15章 帝国からの葉書  第16章 サハリン島  第17章 パンとサーカス 
 第18章 最後の収容所
第3部 革命の日
 第19章 「明日は戦に」  第20章 失われた幻想  第21章 十月革命 
 第22章 メーデー! メーデー!  第23章 愛情省  第24章 黒い九月 
 第25章 テレビ塔  第26章 保守強硬派  第27章 市井の人びと 
第4部 「一度目は悲劇として、二度目は茶番(ファルス)として」
第5部 裁かれる旧体制

ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア 白水社 デボラ・ソロモン著 林寿美/太田泰人/近藤学訳

 ジョゼフ・コーネルは細かく仕切られた箱に、ガラス玉や貝殻、石ころ、その他本人以外はガラクタとしか思えないような様々なモノをコラージュし作品に仕立てた現代アーティスト。本書は彼の評伝です。
 コーネルの作品を見ていると、貝殻集めに夢中になった自分自身の子供の頃をふと思い出します。何かを集めること、それを小さな空間にしまいこみ、色々配置を変えては、ひとつの世界を作り出すこと。誰にでも経験のあることだと思いますが、大人になると次第にそういった事をやめてしまうのはなぜでしょうか。コーネルはなぜ生涯それを忘れなかったのでしょうか。

第1章 1903-17 組み合わせチケット 本券をお持ちの方には次の特典が……
第2章 1917-21 フーディーニを夢見て 
第3章 1921-28 セールスマン暮らし
第4章 1929-32 ジュリアン・レヴィ画廊 
第5章 1933-36 サルバドール・ダリの消えない記憶
第6章 1937-39 新ロマン主義者の登場 
第7章 1940-41 バレエの一夜
第8章 1942  異邦からの声 
第9章 1943-44 《べべ・マリー》、または視覚的な所有
第10章 1945-49 ヒューゴー画廊 
第11章 1949  鳥小屋
第12章 1950-53 イーガンでの歳月 
第13章 1954-55 鳥たち
第14章 1956-57 ステイブル画廊 
第15章 1958-59 ビックフォードで朝食を
第16章 1960-63 ポップ、美術界を行く 
第17章 1964  ジョイス・ハンターの生と死
第18章 1965  さようなら、ロバート 
第19章 1966  さようなら、コーネル夫人
第20章 1967  グッゲンハイム展 
第21章 1968-71 「バスローブで旅する」
第22章 1972  「日の光が差してきた……」