気になる本 02/07

岩倉具視 文春文庫 永井路子

 岩倉具視といえば、幕末から明治にかけて大きな働きをした人で、さぞかし人間的にも素晴らしい人だろうと思っていたが、実際は公家出身でありながら雅さとはほど遠く、矮躯で見栄えもぱっとしなかったらしい。その分、頭の回転は抜群で権謀術数で幕末を渡り歩き、何度も挫折をしてはその都度ふてぶてしく蘇り、ついには新政府で確固たる位置を占めた。
 本書は史料を駆使して永井路子さんが新しい岩倉像に挑むという。どんな岩倉像が描かれるのか。第50回毎日芸術賞受賞作の文庫化。

不貞の季節 文春文庫 団鬼六

 文春文庫からもう1冊。SMの巨匠団鬼六の短篇集。「不貞の季節」「美少年」「鹿の園」「妖花」の四編収録。「美少年」改題。どれも凄そうだが、個人的には谷ナオミの半生を描いた「妖花」を読んでみたい。

貞淑な妻を部下に寝取られ、独り自慰に耽る中年男の妄執。若気の至りの稚児趣味と、その無残な結末。快楽教に堕ちた男女の、狂宴の位置や。ロマンポルノの女王、谷ナオミの、悲しいほどに潔い半生。

その他、気になる本

・「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか NHK出版新書 宮川剛著
・世界史をつくった海賊 ちくま新書 竹田いさみ著

新書2冊。前者はゲノム脳科学の最新研究成果から遺伝子と性格、知能の関係を紹介する。後者は、歴史上、海賊が如何なる役割を果たしたかを明らかにする。単なるならず物集団ではなく、覇権国家の手先としても活躍したという。