気になる本 02/08

TOKYOオリンピック物語 小学館 野地秩嘉

 東京オリンピック現代日本の発展を考える上で大きなエポックメイキングとなる事件だった。本書はその舞台裏で活躍した人々のドラマを描く。有名な日の丸ポスターで日本のグラフィックデザインに大きな影響を与えた亀倉雄策、オリンピック担当大臣の河野一郎を怒らせ、記録か芸術かという論争を引き起こしたドキュメンタリー映画を撮った市川崑。このあたりはよく知っているエピソードだが、目次を見ると、第三章の村上信夫(帝国ホテルシェフ)や、第四章の飯田亮(セコム創業者)のエピソードなどが興味を引く。かなり面白そうなのだが、小学館のHPの試し読みで出てくる内容のやる気の無さが非常に残念(苦笑)

第一章「赤い太陽のポスター」
第二章「勝者を速報せよ」
第三章「一万人の腹を満たせ」
第四章「民間警備の誕生」
第五章「記録映画『東京オリンピック』」
第六章「ピクトグラム
第七章「宴の遺産」
エピローグ

フラクタル幾何学 ちくま学芸文庫 B.マンデルブロ著 広中平祐監訳

 最近流行りのアニメではなく、数学上の「フラクタル」概念の生みの親にして、マンデルブロ集合に名を残すブノワ・マンデルブロの代表作。1万円以上した旧著は絶版だったが、今回上下2巻の文庫で再刊。フラクタルは、細部が全体と相似形であるような図形で、純粋に数学的な対象というだけでなく、海岸線や雲などもフラクタル的な図形と言うことができる。数学の本なので気軽に読める本ではないだろうが、長らく復刊を待っていた人には朗報だろう。


その他、気になる本

・ゲバルト時代Since 1967〜1973 ちくま文庫 中野正夫著
・実録ヤクザ映画で学ぶ抗争史 ちくま文庫 山平重樹著

ちくま文庫から2冊。「ゲバルト時代」は副題に「あるヘタレ過激派活動家の青春」とあるように、学生紛争の季節、末端の活動家として生きた著者が明かす赤裸々なノンフィクション。ちょうど永田洋子死刑囚が死去したばかりのタイミングでの文庫化は何かの運命か。「実録ヤクザ映画で…」の方は先日取り上げた「連合赤軍物語 紅炎」と同じ筆者による実録物。ヤクザ映画鑑賞手引きとしてもいいかも。