気になる本 02/14

日本人の坐り方 集英社新書 矢田部英正著

正坐は「正しい坐」ではなかった!
平安貴族や千利休坂本龍馬はどんな「坐り方」をしていたのか? 私たちが何気なく行っている「坐る」という動作には、日本文化の基層に触れる奥深さがある。目から鱗の画期的論考!

 著者の矢田部英正さんは元体操選手。現役時代の姿勢訓練から日本の伝統的な身体技法を研究するようになり、数冊の身体技法に関する著作を表している。本書は坐ることに着目した一冊。「目から鱗の画期的論考」とまで煽られると興味を持たずにいられない。


鯨人 集英社新書 石川梵著

銛一本で地球最大の生物に挑む人間の記録
インドネシアのラマレラ村は、銛一本で鯨を仕留める伝統捕鯨で知られている。漁師たちは人間の絆と能力を振り絞って、獲物を追う。19年にわたりその太古鯨漁の詳細を取材した雄渾なドキュメンタリー。

 尾びれを水面上に残して海に潜ろうとしている小型の鯨。傍らにいる筋骨隆々のたくましい男がたった一人、身長を超えるような長さの銛を思いっきり突き刺そうとしている。足元は水しぶきで隠れて良く見えないが、舟に乗っているようには見えない。むしろ鯨の背に飛び乗って足元の鯨を思いっきり突き刺そうとしているように見える
 シリーズ共通の装丁を使わず、ブランドイメージを犠牲にしてまで、ビジュアルに訴えかけるこの表紙が、本書の内容を雄弁に物語っているように思える。捕鯨は様々な思惑で語られる漁だが、そんな安全地帯からの正義論めいたものを超え、まさに一対一で命に挑むことの重み、生きることの厳しさを感じさせてくれる一冊になってそうだ。