気になる本 02/15

ポータブル文学小史 平凡社 エンリーケ・ビラ=マタス著 木村榮一

 タイトルを見たときは文字通り文学史をコンパクトな1冊にまとめた本かと思ったけれど、実はスペインの作家エンリーケ・ビラ=マタスの小説(?)。邦訳もある「バートルビーと仲間たち」は書けなくなった作家のエピソードをいくつも集めることで一種の文学史小説になっているという。本書はデュシャンほかモダニズムを彩った実在の前衛作家たちが登場する「前衛芸術史小説」。全く内容が想像出来ないことに逆に興味を覚える。

スターンの小説に由来する秘密結社シャンディ。作品は小型軽量、高度な狂気、独身者の機械──デュシャンはじめ、特異な三条件をクリアし謎の結社に集ったモダニストたちの奇妙な生態を描く、前衛芸術史小説。


葬式をしない寺―大阪・應典院の挑戦― 新潮新書 秋田光彦著

 筆者はかつてぴあに勤務し、名作「狂い咲きサンダーロード」や富田靖子デビュー作「アイコ、十六歳」をプロデュースした人。その人が今や僧侶になって、仏事を行わないお寺を運営している。ぴあから僧侶、一見よく分からない転身だが、お寺を地域コミュニティの生活と文化活動の核にするのが狙いと聞くと、なるほどと思う。

【脱・葬式仏教!】日本一若者が集まる、「革命的寺院」の軌跡。
 
「檀家ゼロ、葬式・法事は一切しない」――。大阪にある浄土宗・應典院は、これまでのお寺の常識をひっくり返す、革命的なコンセプトを持つ。モダンな外観、NPOによる運営、劇場を兼ねる本堂……、それは、閉鎖的な葬式仏教からの脱却をはかり、お寺本来が持つ力と信頼を取り戻すための試みだった。はたして今、社会から求められるお寺とは何か――。改革を担った僧侶自身がつづる、「寺院再生のシンボル」應典院の挑戦。

金髪神話の研究 平凡社新書 ヨコタ村上孝之

 「色男の研究」で第29回サントリー学芸賞受賞を受賞した著者が金髪の謎に取り組む。私は金髪より濡れガラスのような真っ黒いストレートヘアの方が好きですが(笑)

男はなぜブロンド女に憧れるのか。金髪崇拝、金髪物神化はいかにして生まれたか。古今東西の「金髪」に対する文化的態度を検討し、創られた欲望としての金髪フェチを分析する。

その他、気になる本

・エコ論争の真贋 新潮新書 藤倉良著

エコを巡る論争は百家争鳴です。「温暖化は人間のせいではない」「そもそも地球は温暖化していない」という懐疑論は後を絶ちません。「リサイクルなど無意味」「レジ袋はどんどん使い捨てろ」など、エコ活動を嘲笑する論調も目立ちます。生物多様性の問題でも、先進国と発展途上国の言い分は相容れぬまま……。現在進行形の様々な論争を、科学者のフェアな視点から紹介・解説。何を信じたらいいのか迷ったら読む一冊!

ゼロ年代の論点 ソフトバンク新書 円堂都司昭

ゼロ年代の文化状況を読み解くための一冊。
ゼロ年代に注目を集めた議論を、話題になった本を通してポイントを探り、これからの論点をも模索。
批評、電子書籍ツイッター、郊外......時代の論点を読み解き、現代を見渡す内容となっています。