気になる本 02/17

菊池寛大映 白水社 菊池夏樹著

永田雅一は一時は政界フィクサーとも言われた、強烈な個性を持つ大映の名物プロデューサーにして社長。その永田雅一を自分の実弟か息子のように思うとは、菊池寛という人もきっと強烈な個であったのだろう。筆者の菊池夏樹さんは寛の孫なので、あまりヤバい話はでないかもしれないが(逆にとっておきのマル秘話が聞ける?)内容が気になる一冊。

戦前から戦後にかけて、野心に満ち溢れ、強烈な個性の持ち主だった菊池寛永田雅一が、不思議な信頼関係の中で築いた映画のビジネスモデルを検証する、もうひとつの「日本映画史」。
 
菊池寛は、永田雅一にあって、ふたつだけ聞きたいことがあった。きょとんとしている永田に目をむけた菊池はその疑問を口にした。「君、なぜ君が社長にならないんだね。そして、なぜ君が、ぼくを口説きにこなかったんだい」。永田は黙ってしまった。そんな永田の顔を見ていて菊池の心の中には、永田が自分の実弟か息子のように思う感情が湧いてきていた。
(本文より)


探偵小説の室内 白水社 柏木博著

インテリアデザインの観点から探偵小説(というのは何なのか未だによく分からないのだが…)に描かれた室内について分析するとは、何とも面白い視点だ。どんな関係性が出てくるのだろう。しかし、取り上げられた作品をほとんど読んでいないので、そっちを読むのが先かな(笑)

インテリアデザインの論客が、コナン・ドイルなどの本格探偵小説からポール・オースターの現代小説まで15の作品を取り上げ、人間の心理と室内の構造との関係を巧みな視点で読み取る。
  
さまざまなものを集積した室内は、そこに生活する人々に固有なものとなっていく。そして、そこですごした時間の記憶は、その空間に集積されたさまざまなものに結びつけられていく。「室内」つまりインテリアという言葉には屋内という意味とともに、「内面的」「精神的」といった意味がある。たしかに、室内は、そこに生活する人の内面や精神が映し出される。(本文より)
 
目次
はじめに
1 プロスペロ公とは誰か ポオ『赤死病の仮面』/骨董趣味とタイプライター クロフツ『樽』/精神分析学的な室内の観相者 コナン・ドイル『緋色の研究』/姿勢を制限する狭い室内 カフカ『ブルームフェルト、ある中年の独身者』/自我消失の恐怖とドッペルゲンガー ポオ『ウイリアムウイルソン
2 迷宮室内 江戸川乱歩『悪魔の紋章』/何もない室内 つげ義春『退屈な部屋』/保守化する生命体 安部公房『鉛の卵』/ものを堆積させた室内 橋本治『巡礼』/喪失する室内 水村美苗私小説 from left to right』
3 室内を失った男 ポール・オースター『シティ・オブ・グラス』/収容所の室内 シュリンク『朗読者』/十九世紀の室内と電脳空間 ウイリアム・ギブスン『ニューロマンサー』/その日暮らしの老人の室内 マラマッド『悼む人たち』/テロリストは室内を持たない ジャン=パトリック・マンシェット『眠りなき狙撃者』